まとめ - イーモバイル vs UQ WiMAX 遅延比較

遅延について言えば(現在の)UQ WiMAXは(現在の)イーモバイルに比べて10倍くらい良いネットワークと言えるでしょう。

それでいてUQ WiMAXは月額4480円とイーモバイルよりも2000円近く安く、エリアにさえ問題なければUQ WiMAXが一押しとなります。UQ WiMAXイーモバイルのように2年縛りがないのも嬉しい点です。2010年末にもLTEサービスが始まるわけですが、その時点で2年縛りが残っていると悲惨なことになりかねません。

上に書いたことを繰り返しますが、本来は、ここで書いているような情報を定期的にプロバイダが公表すべきであり、定量性のあるデータを比較してユーザが適切なネットワークを選べるようにすることが、プロバイダにとっても利益になることだと考えます。

解析 - イーモバイル vs UQ WiMAX 遅延比較

TCP SYN RTTの大きさに従って並べた結果です。UQ WiMAXのグラフは縦軸が対数目盛なので注意してください。

イーモバイルの結果を見るとPing RTTとTCP SYN RTTには相関傾向が見られます。恐ろしいことに90%近いTCPパケットの遅延が1秒を越えています。これでTCP性能を期待するのは無理と考えられます。この測定では100msを下回るTCP SYN RTTが全体の2%程度でした。条件が良ければ50ms程度のRTTもあるのですが、98%そのようなことはありません。

UQ WiMAXでは90%のTCPパケットの遅延が200ms以下となっており、UQ WiMAXイーモバイルに比べて5-10倍性能が良いことが判ります。TCPパケットよりもICMPパケットが差別されるのはユーザにとって望ましいことです。

ヒストグラム - イーモバイル vs UQ WiMAX 遅延比較

Ping RTTとTCP SYN RTTのヒストグラムを作りました。測定サンプル数が違うので注意してください。

イーモバイルではPing RTTがほぼまとまっているの対してTCP SYN RTTが1秒〜3秒以上の広い範囲で分散していることがわかります。イーモバイルPing性能を良く見せるためにICMPパケットを優先的に中継しているのかと疑いたくなります。

一方、UQ WiMAXではTCPパケットを優先しているように見えます。いずれにしてもUQ WiMAXは200ms以下とTCP SYN RTTに比べてPing RTTの差は10%程度の遅延なので優先しているかどうかは些細なことですが。

RTTの変化 - イーモバイル vs UQ WiMAX 遅延比較

長時間に渡ってRTTを測定した結果を比較します。イーモバイルは変動が激しいので長時間測定しました。これに対してUQ WiMAXは安定しているので測定時間を短くしました。また、UQ WiMAXPing RTTが非常に大きくなっている区間はRTT測定しつつTCP転送を行って負荷をかけています。イーモバイルでは遅延測定以外の通信を一切行っていません。なお、UQ WiMAXのグラフは縦軸が対数目盛なので注意してください。

イーモバイルUQ WiMAXを比較すると、明瞭に以下の違いが目につきます。

  • イーモバイルPing RTTに比べてTCP SYN RTTが非常に大きく、時間帯に依存するパターンがある。
  • UQ WiMAXPing RTT及びTCP SYN RTT共に比較的安定しており、絶対値も小さい。

イーモバイル vs UQ WiMAX 遅延比較

イーモバイルUQ WiMAX、これら二者のネットワーク遅延を比較した。

あくまでも測定した時点での結果であることを念頭において見てください。今後ユーザ数変化、設備拡張、管理方針変更などの理由で結果が変わる可能性があります。私の意図はあくまでもプロバイダの提供するサービスを比較する方法を実例として挙げることであって、現在のプロバイダの良否を示すことではありません。プロバイダの良否は「効果」と「コスト」をユーザが判断して決めることです。

本来は、ここで書いているような情報を定期的にプロバイダが公表すべきです。定量性のあるデータを比較してユーザが適切なネットワークを選べるようにすることが、プロバイダにとっても利益になることだと考えます。